煩悩遍路A日目「不安な旅立ち」―発心の道場―

2016年5月中旬。鬱状態と診断されてひと月が経った。
依然として無気力。本格的に休職期間に入る。
そんなぼくは「歩き遍路」をすることにした。

学生のころ四国一周スケッチ旅をしたときから気になっていたお遍路だ。
何か変わるかもしれない。

どうせやるなら野宿もやろう。
何が要るのか分からない。持ってた登山用の約50リットルのザックに物を詰め込んだ。
テントや寝袋も買った。服は3組。
「重い…これ担いでマジで歩けるのか…?」
あとで量ってみたら荷物は15Kgあった。

野宿なんてしたことない。
変わりたかった。もがいていた。
鬱から抜け出したい。
これからの人生の方向性を見出したい。
たくましくなりたい。

そんな期待をお遍路に託した。



四国遍路とは、仏教・真言宗の開祖である空海、のちの弘法大師に縁のある88のお寺を
巡る旅である(ざっくり)。
一般的には「順打ち」と言って、徳島県にある1番札所霊山寺から、高知、愛媛、香川と
時計回りに巡礼し、88番札所大窪寺にて「結願」となる。
2016年は「逆打ち」、つまり88番札所から1番札所に反時計回りに巡礼すると
ご利益が何倍にもなるという60年に一度の年、らしい。

しかし、僕は初めてのお遍路であるので、順打ちで回ることにした。




電車とバスを乗継ぎ、徳島県は板野町へ。今晩は宿Mに宿泊する。
四国一周スケッチ旅でも泊まったことのある宿であるが、主人は僕のことを覚えていなかった。
「そんなもんか…そんなもんだよな…」

宿では、休みを利用して瀬戸内国際芸術祭を回るという若い女性、
歩き遍路を結願し、明日は1番霊山寺にお礼参りに行くのだという中年女性がいた。
この方からはこの先のオススメ宿や、野宿してる人を見たという場所の情報を教えてもらった。

こうした情報はさっそくありがたい。が、まだ歩いてすらいない僕だ。
いつ辿り着くかも分からない土地のことをスラスラ教えてくる彼女に圧倒された。
必至に地図にメモをする。
きっと、彼女の脳裏には歩いてきた道、風景がくっきりと思い出されるのだろう。
歩き遍路というもののある種の壮絶さを感じた。
果たして自分にできるのだろうか。


不安半分、楽しみ半分。いや、不安8割?
今回は通院の関係でどのみち最長2週間しかかけられないのだから、
通し打ち(いっぺんに88箇所を回り終えること)はできない。
完璧を目指さず、ゆっくり歩こう。
やってみて無理そうなら帰ればいいじゃないか。そう自分に言い聞かせる。

「明日の宿は決めてますか?」と宿の主人。
「いえ、なんにも決めてないです…」
「そうですか、でもなんとかなると思いますよ。がんばってくださいね。
 明日の朝は霊山寺まで送っていきますから、7時に玄関で待っていてください」



鬱状態のため寝付きが悪いのに加え、緊張している。
そんなにすぐには寝られない。

いよいよお遍路が始まるのかぁ。
明日の今頃はどこで寝てるんだろう。

遠くで、高速道路を走るトラックの音がたえず聞こえる。
夜はふけていく。



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