煩悩遍路16日目「そしてまたひとりになるのだ」―修行の道場―

テントから2人顔をだすと、そこにはまだ昨晩の憎きネコちゃんがいた。
朝飯を喰らいながら、ネコをあやす。
準備をしてガソリンスタンド跡を発ってもしばらくついてきていたがそのうち引き返していった。

ホッとしたと同時に、なんだかかわいそうな気もした。



きょうは6月9日。気づけば二回目の区切り開始から1週間以上経っていた。
このくらい経つとだんだんと人間の思考は摩耗してくるようで、
色々とポジティブというかアバウトに考えられるようになる。

服や荷物が汚れたり濡れたりしてもどうでもいいし、お風呂に入らなくてもどうでもいいし、
ネコに起こされようが、足が痛かろうが、身体が臭かろうが…

…ポジティブとヤケクソの境目は何だろう?
でも、昨日のように、つらい雨の中でしか見られない霧がかった荘厳な山々の景色もあるのだ。



リクくんととりあえず37番岩本寺へと向かう。

道中、「お遍路は人生である」というテーマで大喜利をした。
・雨の日もあれば晴れの日もある
・計画通りにいかない
・出会いと別れがある
・人によってルートや方法が違う
・お金がかかる
・い つ で も や め ら れ る(意味深)
これもまたヤケクソ。2人でめっちゃ笑った。

そんなこんなで昼前に岩本寺到着。
お寺の前でちょっと道に迷ったが、地元のおばちゃんが教えてくれた。
お寺がある町の住民はお遍路に優しく接してくれる…気がする。

誰かが言っていた。
「迷った時は地図を見るな、人に聞け。」
見知らぬ人に尋ねる敷居もすっかり自分の中で低くなった。



リクくんは足のマメの化膿がひどすぎるので、
靴を買い換えるか、病院に行くか、迷っているようだった。
正直、実物を見るとその足でこの先の山々を歩くのは無謀に思えた。

で、結局彼は病院でとりあえず診てもらうことに決めたようで、
近くの窪川駅から四万十の中村駅まで電車ワープしていった。

さよなら、リクくん。
そしてぼくはまたひとりになった。
ああ、連絡先聞くのまた忘れた…

暑い日差しがぼくの顔を焼き付ける。なぜだかそれが心地よく、さみしかった。



コンビニでカツサンドを買い、日陰で昼ごはん。

携帯の電波をONにすると、イタルさんからメールが届いていた。
ちょうどいま、ヤマさんと超高速マルさんと3人で昼ごはん食べてるとのこと。
昨晩は土佐久礼のベッド付き休憩所に泊まったらしい。

2~3時間ほどの距離のズレ。

ぼくのいない所で、ぼくの知っている人達が、新たな交流を持っているということ。
一方でぼくはひとりでこうして歩いていること。

携帯をOFFにして、お遍路はひとり旅なんだぞと虚勢を張って、もくもくと歩く。
左足の足首の痛み、肩に食い込む荷物の重みが無視できなくなってきていた。
ひとりきりになったこの旅、いつまで続けられるのだろうか。



なにもない国道を進んでいると、土佐佐賀温泉Kが見えた。
ちょっと中途半端な時間だったけど、昨晩は野宿だったこともあるし、入浴することに。
スタッフの方が完璧なるお遍路対応をしてくれて、超親切だった。

温泉に隣接する遍路休憩所にてしばし身体を冷まし、足を乾かす。

そういえばマルさんは今晩この温泉に宿泊すると言っていた。
「髭坊主のマルさんという方が泊まると思うので、よろしくお伝えください」と
スタッフに言付けした。
唐揚げとおにぎりのお返しに、ビール一本でも差し入れすればよかったなとあとで思ったけど、
まあいい。



ひとり旅をしつつ、意識は他の遍路仲間に向いている自分。

お遍路はアンビバレンツだ。

ひとりで歩くのが基本だけれども、
必ず地域の人や遍路仲間に助けられ、意識が他人へ向く。
つまり、ひとりで生きることを強いられながら、ひとりでは生きていけないことを知る。

実体験としてこういう状況になっている自分に気づけただけでもお遍路をした意味はある。
そう言い聞かせたあと、温泉を出発した。
マルさんがその直後にニアミスで温泉に到着していたらしいが、
それを知るのはまたしばらく先のこと…。



今日も今日とて日没まで歩く。
再び海が見えた。

灯りの付いているうどん屋さんに吸い込まれるように入る。
今夜はどこで野宿しようかと思いながらうどんを啜っていると
おかみさんが、今夜はどこに泊まるのかと話しかけてきた。

近くでテント泊しようかなと思ってるんですと言うと、それなら、と
すぐそばの公園の東屋が野宿スポットですよと教えてくれた。

こうしてまた、人に助けられるひとり旅。



これまでに出会った遍路仲間のことを思いながら、
蒸し蒸しする海辺の公園で野宿をした。

16日目


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