煩悩遍路23日目「最終日、そして、縁あって…」―菩提の道場―

23日目

雨の最終日。

久万高原町の中心部へ国道を下ってゆく。
足は痛いし気力も無く、天気も天気なので、ここから三坂峠まではバスを利用することにした。
十数キロ、3時間くらいのワープ。

峠からは、46番浄瑠璃寺まで、ぬかるんだ下りの山道をしばらく歩く。
眼下遠くに見えるのは…松山だ。
四国ナンバーワンの都会。人気のない道を含めずっと歩いていると「都会」の特異性がよく分かる。



11時前に46番浄瑠璃寺に到着。なんか植物にあふれたお寺だった。

ここからは47番八坂寺、48番西林寺、49番浄土寺、50番繁多寺、51番石手寺と、
15km以内にお寺が密集している。
お寺の密集具合からも分かる都会らしさ。

石手寺で一旦打ち止めとなる。そこまでがんばって歩こう。



雨の日であったが、今日も沢山の出会いがあった。



まずは、昼過ぎ、空腹で辿り着いた西林寺近くのうどん屋さんにて。
食べ終わったあとお店を出ると地元のおばちゃん達が並んでいた。
軒下でそそくさとレインウェアを着ていると話しかけてきてくれた。

雨の中よう歩くね~みたいな話だったと記憶してるけど、一番心に残ってるのはこの言葉。
「旅の目的はなに?」
う~ん、目的は…何だろう。歩いてみたかった?色んな人に会いたかった?鬱の治療?
うまく答えられなかったけど、こうした優しい会話は心があたたまる。

この質問は、この場所以降、特に香川でのちのち頻繁に聞かれることとなる。



一方、とあるお寺ではバスツアー遍路のおばちゃんが狙い定めて話しかけてきた。
「わたしは10年前20kg背負って歩いたの」
「お兄さんの荷物小さそうだけど野宿はしてないのかな?(笑)」

…うっさいわ!(笑)
なんやねんその嫌味っぽい言い方。野宿してますがな。
昔と違ってコンパクトに収納できるんだよーだ。

と、反論したかったけど言ったところで意味ないので、軽く愛想よく会話して退散した。



石手寺の手前では、下校中の小学生集団と挨拶をした。
ちょっと道に迷ってたので話しかけてみた。

「石手寺に行きたいんだけど、どっちに行けばいい?」
「この道をずっと行けばあるよ!」
「ありがとう!」
「お兄ちゃんはどこから来たの?」
「石川県だよ!…あ、歩いてきたのは徳島県からだけど(笑)」

みんなちょっとざわついていた。

「君たちもいつか…ぜひ歩き遍路してみてね…!」
そう言って、彼らとは別れた。

雨の中びしょ濡れになりながら、遠いところから歩いて来たという大人を見て何を思っただろうか。
ただ歩くためだけに、自分の住む町に全国全世界から多様な人が来る。それがここの日常。
四国という土地は本当に面白いなと、改めて思った。



最後に辿り着いた51番石手寺は、デカかった。
実はこのお寺に来るのは3回目。
道後温泉から歩いてすぐ来れるので、興味あって寄ったことがあったのだ。
でも、今回歩き遍路として他の札所を見た上でこのお寺に来ると、
その異様さと規模の大きさがよく分かった。

何が異様かは、是非自身の目で確かめていただきたい。面白いので是非。



時刻は17時。
目標としていた石手寺をクリアしたので、あとは宿へ行くだけ。
昨日の朝に予約したゲストハウスF。道後温泉駅から目と鼻の先にある超好立地。でも格安。
どんなゲストハウスだろう。

玄関を開けると、オーナーではなく若いスタッフの男性が応対してくれた。
入ってすぐ、その居心地の良さが感じられた。入ってすぐに共同スペース。ごろ寝できそう。

すぐに連泊が可能かどうかを尋ねてみた。OKとの返事。よかった!
6月は閑散期のようだ。
明日は1日のんびりできる。

スタッフが尋ねてきた。
「お遍路ですよね」
「そうです、でも松山で区切って一度家へ帰ろうと思ってて」

「ドミトリーには一人数日間連泊してる歩き遍路の子がいるよ」
「へー誰だろう」


簡素な宿帳に住所氏名を記入しているとき…何行か上に見覚えのある名前が記入されていた。
……えっ、リクくんじゃないか!
えっまさかこの宿に泊まってたの????
…と思ってたちょうどそのタイミングで、玄関の扉が開いた。

リクくんがいた。「え?」
彼もまた、自分以上に驚いていた。

まさか、ここで再会するとは!!

2人とも笑い転げていた。
まさか、まさか!ここで?(笑)



高知県に入ったばかりのお寺Mの通夜堂、青龍寺近くの国民宿舎T、七子峠、その他の道中…
しばしば出会って、寝食を共にし、同じ数だけ別れてきた。

一週間前、岩本寺まで一緒に歩いたあと、
リクくんは足のマメの診療のために病院へ行くと言って電車で先に進んでしまったし、
僕は僕で、足摺岬をイレギュラーに車で往復したし。

そんな、お互いバラバラに歩いてたはずなのに、
最後の最後でこんな離れたところで会うとは。

そもそも、最初に宿泊しようと考えていたSゲストハウスが臨時休業じゃなくて、
もしそちらに泊まっていたら、会うことは無かったわけだよな。



「縁のある人とは3度会う、と道中で地元のおじさんに言われたんですよ。
ほんとにこれは縁ですね!」と彼。
そうだなぁ、縁だなぁ。

旅の最後の弘法大師さんのサプライズと本気で思った。
お遍路は、おもしろいな……。



再会を喜んだあと、僕はとりあえず温泉と夕飯を食べに外出した。

「松山に着きました、ゲストハウスで連泊してここで一旦区切ろうと思います」と
シロさんにメールをしたら、すぐに電話がかかってきた。

「松山までよく歩いたね。おめでとう」
「お遍路再開したら教えて。また会いたいね」と。

気にかけてくれているのがとても嬉しかった。



相変わらず混んでいる道後温泉にて疲れを癒やし、
アーケード内のお店でカツ丼を食べた。満足。この旅でカツ丼は何度目だろう。
身体がタンパク質を欲しがっている。



コンビニでポテチを買って、宿のスタッフとリクくんと一緒に食べた。
スタッフからは、自作のプリンをご馳走してもらった。びっくりするくらい美味しかった。

宿に戻ってから寝るまで、リクくんとの話は絶えなかった。
つもりにつもった話をした。
誰に会って、どんな体験をして、どのルートを辿って、いかに感じたか…。



メモ帳に書き記しているものを列挙する。



遍路玄人は情報をたくさん持っているが、面倒くさい。
初めてか2回目の歩き遍路は、新鮮な出会いをお互い求め、楽しめてる印象。

歩き遍路の醍醐味は「出会い」。

2回目の遍路をする可能性はあるか?という話題。
普段の生活で、新鮮な出会いに飢えたら、2回目も来るかも。…と言いつつ、
同じ旅を2度することは無いようにも思う。前回の旅をなぞるだけになるかもしれないし。
番外札所も含めるならアリかも。もしくはスペインのサンティアゴ巡礼か。

60代の会社リタイア後に歩き遍路している人はよく見るけど、
僕らは40年分先にこの経験をしている。
これは今後、自分たちの強みになる。直接ではなくとも、きっと何かに活かせる。



リクくんの足のマメの様子を見せてもらった。
全然治ってないどころか、更に悪化しているようだった。一応薬は飲んでいるようだけど。
この宿にも数日滞在し、足を休めているらしい。

歩くのではなくて、ヒッチハイク遍路に切り替える、みたいな話になり、
明日、近所の文房具屋さんにスケッチブックを買いに行ってみることにした。

ぼくも買いたい画材があったし。



6月1日に再開した2回目の区切り遍路。16日かけて松山まで辿り着いた。
この旅も、ここで、今夜終わりとなる。

その最後に用意されていた嬉しいサプライズに感謝しつつ、
お遍路のことのみならず、これからの人生についてもとりとめもなく話し込んだ、良い夜だった。

明日はもう歩かなくていい。
布団の気持ちよさを噛み締めながら、日付が変わるころ、眠りにおちた。


23日目(2)


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