煩悩遍路E日目「3度目のスタート」―菩提の道場―

2回目の区切り遍路を終えて2週間が経った。
まだまだ復職できる状況ではないという判断を医師・会社からともに受け、
休職期間は延長となった。
要するに「焦るな」と。

実は、遍路から日常に帰ると急に調子が悪くなっていた。
当然疲れが出ているというのはあるとは思うけど、
なかなか夜寝つかなかったり、家でゴロゴロしていて気分がふさがったり。

でも、こうしてまた休職期間が延びたことで、お遍路再開の目処がたった。
家で一人過ごしていてもしょうがない、また四国へ行こう、残りを歩ききろうと決心した。



今回の再々スタートにあたって、また装備の見直しをした。

まずはレインウェア。
撥水機能がガタ落ちだったので、最後の望みを託して、洗濯と撥水スプレーとアイロンがけ。
これで撥水が回復するはず…。

続いてテントの下に引くブルーシート。
地面に直にテントを敷くと汚れたり湿ったりするから、一枚テントサイズに切ったブルーシートを敷くと随分違うよと野宿仲間から教えてもらっていたのだ。

ブルーシートを追加する代わりに、テントの外側の部分であるフライシートは持っていかないことにした。季節はもう夏。二重構造だと夜は蒸し暑いだろうという判断。

その他、電池式虫除け、粉末タイプのスポーツドリンク、顔拭きのウェットティッシュなども用意した。

区切り打ちは、こうして毎度装備の見直しができるのはメリットだなと思う。



7月4日(月)、電車とバスを乗り継ぎ、愛媛は松山へと向かう。
前回の遍路最終日に連泊したゲストハウスFに再訪。
女性のスタッフさんが覚えてくれていた。嬉しい。

2周間前くらいに、僕の出発とほぼ入れ違いに入ったという、新しい男性スタッフさんがいた。
僕と同い年。その割に年上の風格がある…と思ったら、
何年もアジア放浪の旅やそこでの暮らしを経験してきたとのこと。
数年前に歩き遍路をして、その時この宿に泊まって、お遍路を止めたという。
オーナーが前に言っていた、この宿の「へんろ殺し」で遍路をやめて、
今度スタッフになる人がいるよ、というのは彼のことだったようだ。

彼はスタッフになってから、知り合いのバーを昼に間借りして、インドカレー屋を始めたとのこと。
なんというか、バイタリティと実現へのスピードが突き抜けててすごい。
でも、すごく自然体な佇まいで、無理しているような感じはなかった。

彼と色々話をしていたが、面白かったのは、
「スタッフ側からするとゲストハウスはガチャポンだ」という話。
たまに超おもしろい人が来て勉強になる…と。
でも、それはその人ならではのことで、そのまま真似するもんでもないよね、とも。
たしかに。

あとは、あれこれ考えるよりも行動したほうが早いしなんとかなる。
或いは考えてなかったことが起きるから、事前に考えて悩む必要が無い。って。

彼が言うと説得力あるんだよなー。
考えるよりもまず行動。



その晩は、僕以外に、会社の営業の出張で松山に来ている女性が泊まっていた。
聞いたところによると、本当は図書館の司書をやりたかったらしいが、色々あって今の仕事をがんばってやっていると。

業績アップすると、いわゆるインセンティブとして、その社員にはグアム旅行が会社からプレゼントされるらしい。
彼女曰く、スカして反発するよりも、会社方針に乗っかって業績アップに向けて頑張ったほうが
旅行もできるし、仕事への気持ちも入るし、トータルで考えると良いことが多いと。

これもまた真だよな。
「転職とか考えないんですか?」というレベルの低い質問をしたのが恥ずかしくなってきた。

結局は気の持ちようということか。



今晩はオーナーさんは登場しなかった。
共同スペースでの歓談はひっそりと幕を閉じ、寝床に入る。

明日から再開するお遍路、残る距離は300kmちょっと。あっという間に終わるかもしれないな。
余計なことは考えず、ゆったり歩こう。

E日目


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