煩悩遍路25日目「鼻歌交じりで」―菩提の道場―

25日目

夜明けとともに起床。
道の駅の朝は早い。テントの片付けをしていると既に施設の職員さんが開店前の準備を始めていた。


清掃員のおばちゃんと、地元のおばちゃんと喋ることができた。

この道の駅が出来て、ここの仕事に就いたおかげで毎日色んな人と喋れるし、
お給料で旅行やバス遍路にも行けて嬉しいと言っていた。

もちろんこのおばちゃんの持つ元々の活発さや明るさ、人との交流への意欲があってこそだとは思うけど、
そうした能力(?)が発揮されうるこういう場での仕事をするという選択もあるんだよなぁと
当たり前のことを感じた。

「若い人が歩いている姿を見るだけで元気が出るのよ」
この言葉には救われた思いがした。

今日も快晴。良い一日になりそうだ。



昨日に引き続き、海のそばの道を歩く。

海は水色、砂浜は肌色。
穏やかな波。
沖には島の緑がポコポコ見えている。
見えているのは島々かそれとも本州か?よく分からない。
時々砂浜に降りて、寄せては返す波を見る。

太平洋とはガラッと異なる景色。遠くまで歩いてきたんだなと、ここでも実感する。

鼻歌交じりで一人きままに。
心が落ち着いている。
長距離歩行の煩悩はすっかり無くなっていた。



菊間町。
ここでは至る所で製瓦屋さんをみかけた。どうやら瓦の町らしい。
壁一面のサイズの鬼の顔した瓦があったりして、壮観だった。

自転車に乗った作業着の一行がぼくを抜かして前方へ。
みんな社員寮で共同で暮らしているんだろうか。
なんとなくのどかな一場面だった。

おそらく彼ら勤務先の製油所に着いた。ここの工場の造形はかっこいい。



この近くに、「出る」ことで有名なお堂がある。
何かで見た野宿場所リストにも、泊まれるけどやめとけといったことが書いてあった。

ぼくはもっぱらこういうのに弱いので、勿論泊まりはしないけど、
一応気になるし昼間だから大丈夫だろうと思って寄ってみた。

まあ普通の…ちょっとさびれたお堂。
お布団もあるし、戸締まりはしっかりしてるし、湿気も…
トイレは…ちょっと遠いな…
ノートが置いてある…なになに、噂を聞いて泊まりに来たけど大丈夫でした?
ほんまかいな。

火照った身体が少し冷えてきたところで退散。
この記事の更新後、音信不通になったらお察しください。



進路はいよいよ完全に東向きになった。54番延命寺を越え、今治市の55番南光坊につくと、
今度は南向きに変わる。



山を越え、今治の市街地に入った。
そこの忠霊塔の公園で、昼間からお酒を飲んでいるおじさんと、近くのお店のおばちゃんと
しばし話しをする。

「歩き?」「野宿?」と質問され、
近場のルートや野宿可能場所など色々なことを親切に教えてくれる。
きっと似た境遇のお遍路さんみんなに同じことを言っているんだろうけど、
その優しさは独り歩きの身としてはとてもうれしい。

そんな中知ったのだが、どうやらこの公園は野宿可能らしい。
というか、このおばちゃんがやたらめったら勧めてきた。

妙に強く勧められ、なんだか怪しい気がした。
「また戻ってくるかもしれません」と伝えて、先へ進むことに。
まだ15時前だったし、ここから南光坊まではピストン区間なので、また戻ってくることもできる。



15時半、南光坊に到着。
ベテラン遍路の人から、ここの住職は面白いから話しかけてみて、と言われていた。
たしかに、雰囲気が面白い感じだったけど、特別なことを話したわけではないので
それ以上のことはわからなかった。

ただ、「このお寺の隅にテント張れますか?」と聞いたところ、
お堂の軒下なら大丈夫、ただしその場合は君の住所を知らせに来てね、ということと、
飲める水(水道水)はこの蛇口、それ以外は井戸水だから飲めない、ということも親切に教えてくれた。



とりあえず、野宿可能場所が近辺に二箇所あるという確証を得た。

近くに温泉があるらしい。今日は暑くて汗をびっしょりかいたから温泉に入りたい。
そして、洗濯もしたい。調べてみたところ徒歩圏内にコインランドリーもある。

というわけで、まだ時間は早いが、今日の歩きはここで終了することにした。
ほんと、お遍路を再々スタートしてから、のんびりモードになってる。
前回の距離稼ぎへの執着はなんだったんだろう。



温泉はメンズデーで、少し安く入れた。
「今日はメンズデーだよ」というただそれだけの話題で地元の人と少し会話して笑った、
そんな、ちょっとした良い話。

温泉→水風呂→温泉→水風呂…の繰り返しが、たまらなく気持ちいい。
歩き疲れた脚と、炎天下の中で熱を帯びた皮膚をケアしてくれる気がする。

さっぱりしたあとは、夕焼け空の下、コインランドリーへ。
近所の50~60代のおっちゃんが、昔自転車で青森まで行って、野宿してるときに
熊や鹿に会った話をしてくれた。

すれ違うだけで関わることの無かったかもしれない他人の人生にも、
その人だけの旅の思い出というものはきっとある。



コインランドリーからの距離的に、南光坊より忠霊塔の方が近かったので、
結局、昼間通った忠霊塔の公園にテントを張ることにした。

お酒を飲んでいるおっちゃんはまだベンチで寝ていた。
失礼だけど、関わるとちょっとめんどくさそうだったので、少し離れた場所にテントを張った。
一人でゆったり、テントの中で夜を待つ。
日が暮れると、暑さは少し和らいだ。

もう、夏なんだなぁー。



昨日と同様、25kmほどしか歩いていない。
無理をしない範囲で歩き、結果、夕方には温泉でくつろげ、地元の人との交流の時間を多く取れる。

いいペース。
菩提の道場の後半戦、ようやく、「菩提」の心境に近づいてきたかな。


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