煩悩遍路29日目「与え与えられ」―菩提の道場―

29日目(1)

小雨が止んだタイミングで、ヨシさんより一足先に東屋を出発する。
最後までもう一息、楽しんでいきましょう。

今日は一日中曇り。梅雨らしい、じめじめした日だった。

10時前に、駅で知人と待ち合わせ。ツイッターのフォロワーさん。
つまり藤子不二雄作品のファン仲間。年齢はそこそこ離れてるけど。
ぼくの旅をツイッター越しに応援してくれてて、
ここを通るタイミングで会いましょうということになったのだ。
お久しぶりです!

勤務先の事務所に連れて行ってもらい、そこでアイスコーヒーをいただいた。
日曜日なのに上司の方もいて、お仕事大変ですねぇと。

長年地元に住んでるけど、遍路のことはちゃんとは知らないと言っていた。
お遍路さんも見かけるけど、関わることはないらしい。

これまでぼくは歩き遍路として各地の地元の人からお接待やら道案内やら受けてきたけど、
それは(特に市街地では)限られた人のみがやってるわけであって、
大多数はノータッチなんだろう。

今回、ぼくがお遍路として彼の地元にやってきたということが
ある意味、彼と遍路とを関わらせるきっかけとなったようだ。

お遍路のことを知りたいという意味も含め、三角寺まで一緒に歩いてもいいですか?と。
地図もプリントアウトしていたし、なんだか楽しそうだ。



お寺に向けての坂道がはじまった所で、近所の家のおばちゃんからペットボトル2本をいただく。
地元の人が地元の人からお接待をもらっているというちょっと面白い構図。

そこからのアスファルト山道は、歩き慣れてない人にはしんどい。
道が濡れてて滑りそうだった。そして湿気・気温ともに高くて汗が止まらない。
よくあるき続けてるねーと。

やはり体験しないと分からないことはある。
それは、歩き遍路自身もそうだし、地元の人にとってもそう。
歩き遍路経験者が歩き遍路によく声をかける理由はこういうところにあるんだろう。

12時、標高500mの65番三角寺に到着。
「歩き遍路を見かけたら、ぜひ声をかけてください!きっと喜ぶと思います」

ここからはぼくは雲辺寺に向かって更に山道を進む。
面白い経験ができた。



お接待について考える。

例えば友達や先輩からご飯をおごってもらうというのは、日常生活の中でよくある。
友達が自分の家に遊びにきたときに飲み物を出して一服してもらうというのも、よくある。

それが知らない人の場合だったらどうだろう。
知人でない限り、普通はそういうことはしない。
でも、ここ四国では、お接待という形で、それが現実に存在している。

今日会った彼にもコーヒーとお昼ごはんをごちそうになったが、
これは「おごってもらった」のか、「お接待」なのか決めかねる部分がある。

なぜなら彼は知り合いであるし、お遍路との接触もこれまでにほぼ無かったから。
でも、地元の人でもあるからその点ではお接待?

別にそこに線引きをしたいのではなくて、単に疑問というか関心をいだいた。

ここで結論を出すこともできないし出す意味も特に無いけど、
外部に住む自分が歩き遍路としてこの地にやってきて、
それがこれまでお遍路と接触がなかった地元の人と遍路とを何かしら関わらせるきっかけになって、
自分だけではなくこれまでの先人たちとその知人たちもきっとそういう出来事はあって、
もしそうした連鎖が今のお遍路およびお接待文化を支える力の一部になっているんだったら、
そのループ性というか再帰的側面が面白いなと思う。

僕が最後に言った
「今後歩き遍路を見かけたら、ぜひ声をかけてください!きっと喜ぶと思います」
という本心からの言葉も
きっと他のお遍路さんも似たようなことを思ったり誰かに言ったりしたかもしれない。
それが回り回って伝わって、ここまでの道のりで僕に「気をつけてね」と声をかけてくれた
大勢の人たちになったのかもしれない。



番外札所の椿堂で休憩をしていたら、バイクに乗ったお兄さんが声をかけてくれた。
ここではタケさんと呼ぼう。
アイスボックスには凍ったチアパックの飲み物が沢山入っている。
その一つをお接待してくれた。

タケさんはNPOで農業の仕事をしてて、今日は雨だからお休みとのこと。
「今日はどこまでいくの?」
「この先の民宿Oに泊まります」
「ここからだったらあそこしかないよね~」

どうやらお遍路にそこそこ詳しいようだ。



蒸し暑いこの道程で、凍ったカルピスウォーターは最高だった。
額や頬、首に押し当てて身体を冷ましつつ、融かして飲むの繰り返し。

そして今日で愛媛県とついにお別れ。
ついに香川県かと思ったら、一旦徳島県三好市を挟むようなルートとなっていた。
途端に車が徳島ナンバーになってて面白い。



今夜泊まる民宿Oは、こぢんまりとした建物で、ゆったりできて良かった。
宿泊者の99%はお遍路さんだろう。典型的な遍路宿だ。

居間の壁にはびっしりと過去のお遍路さんからの写真やメッセージが貼られていて、
愛されているのが伝わってくる。
本棚にはお遍路に関する書籍がたくさん。よく見てみると多くが自費出版の遍路体験記だ。
歩き遍路は自身の体験を何かしらの形でアウトプットしたいという思いが芽生えるらしい。分かる。
例に漏れず、ぼくだってこうしてブログとして形にしているし。

夕飯時には、宿の主人が66番雲辺寺までのルートを写真と地図つきで詳しく教えてくれた。
立て板に水とはこのこと。

宿泊者はぼくの他にもう一人いて、岩手からの29歳の男性だった。
このところ雨続きだし、最近はサンダルで歩いているらしい。
昨日会ったヨシさんとも抜きつ抜かれつしていたようた。

そして主人から聞いた話だと、100日遍路をしているマサさんが2日前に泊まったらしい。
マサさんは1日の歩行距離が短いから、結願までに追いつけるかもしれないなあ。



この宿に泊まった膨大な人数のお遍路さんは、このご主人と出会い、
旅情報のみならず笑顔と思い出をもらう。
そして、結願したのちに、彼らもまた、写真やメッセージ、本などを宿に送る。

ここにも、与え、与えられる循環がある。

29日目(2)


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コメント

にしお #-

あともう少し

お疲れ様ー!
いつも思ってたんやけど、旅の密度が濃いよね。色々感じて考えてすごいな、いい経験してるなって思って少し羨ましいw
インターバル期間は体調悪かったって読んでほんま大変やなって思ったわ><

結願したときちかひら君が何を感じ考えたのか、読むの楽しみにしてるわ!
ブログの時間軸のちかちゃんあとちょっと頑張って!笑

2017年01月29日(日) 23時01分 | URL | 編集

ちかひら(管理人) #-

>にしおさん

コメントありがとう!

普通の旅と比較するとお遍路はほんとに沢山の人と関わるから、濃かったよ。

そやねー色々考えたよ笑
ブログにするにあたって新たに思ったことも書いてはいるけど
基本的には当時のメモにあるポエミーなことを元にしてるので
残りの分もお楽しみに^^

2017年02月01日(水) 22時32分 | URL | 編集


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