煩悩遍路33日目「涅槃とはうどんである」―涅槃の道場―

33日目(1)

ぼくは讃岐うどんの大ファンであり、そこにうどんがあるから香川に来るレベルである。
遍路道沿いには多くのうどん屋さん、しかも有名店も結構揃っているので
これは食べないはずがない。

前日の夜に、ゲストハウスKのオーナーにアドバイスをもらいながら
うどん屋さんめぐりを組み込んだ今後のスケジュールを立てたのであった。



さて、朝イチで「宮川製麺所」へ。善通寺の近くにある、地元密着型のうどん屋さん。
うどんを店員さんから受け取ったら自分でチャッチャと好みの加減で茹でて、
大きなお鍋にあるいりこたっぷりのつゆを自分でかける、セルフスタイル。

ここはゲストハウスKに泊まる度に毎朝食べに来るのだが、
色々廻った結果このお店の「かけ」が一番美味しいとぼくは思っている。

注文したのは「かけ大」と、トッピングの丸天(350円)。
最高の朝。まぁ、前日の朝も食べたんだけどね。

ゲストハウスに戻り、荷物を準備してから出発。
この宿あっての今のぼく。また来ます!



76番金倉寺へ。
この近辺にはどちらも有名店の「はなや食堂」「長田in香の香」があるのだが、
営業時間・営業日が合わず、今回は見送り。
2軒とも以前食べに来たことはあるのでまあ良い。



そのままてくてくと多度津町から丸亀市を横断し、78番郷照寺へ。
その手前にある宇夫階神社の境内に、「うぶしな」がある。
ひっそりとした佇まいなので、見つけるのにちょっと苦労した。
11時開店。開店と同時に入店する。

このお店は、神社の息子さんがやっているらしい。
しかも、他の有名店で働いていたということで味にも定評があるとのこと。

ぼくは「かけ」を注文(250円)。平たいくねっとしたした麺で、おいしかった。
開店前に一緒に並んでいた勤め人のグループも、和やかに食べていた。



3軒目は、坂出市にある超有名店「日の出製麺所」。
なんと営業時間が11:30-12:30の1時間しかない。
うぶしなから駆け足で向かう。
少し遍路道から外れており、スマホの地図アプリを駆使しつつなんとか12:15に到着。
…間に合った。

さきほど食べたばっかりなので、「ひや小」を注文(100円!)。
ネギはハサミ(!)を使って自分で切るスタイル。これも人気の要因の一つだろう。
木曜日とはいえ、めちゃくちゃ混んでいた。
味は良かったんだけど、せわしなくて、あんまりお店自体を味わえなかったな。

お店から出ると、すっかり夏の空になっていた。
予定に入れていた「がもううどん」はここから6,7kmの距離があるが、13時半には閉まってしまう。
間に合いそうもないし、このために電車に乗るのもアホらしいので、諦めることにした。



坂出駅前の商店街をゆったりと歩き、ベンチで少し休憩していたら、「中で涼めますよ」と
おばさんから声をかけられた。そこは市の観光案内所だった。

中では冷茶とどら焼きのお接待をいただくことができた。
係のおじさんは遍路の先達さんだった。神聖とされる三葉松の押し葉をくれた。
山口出身のお遍路さんが、昔、ずっと遍路をし続けて、沢山の道標を作ったんだよ、とか、
88番札所では無くよ、とか、色々と話をしてくれた。

いい感じに涼んでいると、先ほどのおばさんが入ってきて、
近所で買ったというパンをお接待してくれた。
聞くところによると、出身はここだが今は別のところに住んでいるらしく、
お遍路は興味があるが詳しくは知らないそうだ。
係のおじさんの話を熱心に聞いていて、なんだかぼくも嬉しくなってきた。

ゆっくり歩いていたからこその出会いだなぁ。



30分ほど休憩してから、再出発。
近くの「こむぎ屋」といううどん屋がおいしいよと教えてもらったので、そこにも行ってみる。
これで昼食は3食目か…

「かやくうどん」を注文(260円)。かまぼこ、卵焼き、海苔が入った温かいうどん。
味は良かったけど、具が入っているとなんとなく讃岐うどんのイメージと離れる気がする。
他所の土地の人間の勝手なイメージだとは思うけど。
お店の雰囲気はすごく良くて、店員のおばあちゃんにはかなり癒やされた。



超満腹の状態で、ゆっくり歩いてゆく。
道沿いに、温泉の看板が立っていた。調べてみると、そう遠くない距離にある。
近くの川にかかっている橋の下でテントも張れそうだし、晴れているから増水もしないだろうし、
今日の行程はここで終了することにした。



16時、高台にあるS温泉へ。
服を脱いでいたら、おじさんが話しかけてきた。
大きなザックと金剛杖、そして真っ黒な肌を見ればぼくが歩き遍路だということはすぐ分かる。

おじさんは、大手化学メーカーに勤めていて、来年定年で退職するらしい。
お遍路のことや、この地域のこと、それからぼくの仕事や人生に対する悩みなどについて話した。

「なるようになるから焦らずに」
「若さは価値。可能性は沢山ある」
「仕事はスイッチの切替えが大事。趣味や友達を作って、有意義なオフの時間を持とう」
「君は頭がいいから余計なことを考える。先々のことは置いといて、まずは目の前の仕事に励もう」
「うちの会社、入る?(笑)」

眼下に広がる川と五色台の山々の景色を眺めながら、長い時間、おじさんと話をした。
人生観について一家言ある人だった。

遍路旅で出会った様々な見知らぬ人達もそうだった。
みんな日頃から人生についてこんなに考えているのだろうか?
それとも、考えている人だから話しかけてくれるのだろうか?



温泉からあがり、例の川原の橋の下にテントを張る。
全然空腹になってなかったけれど、
お接待でいただいたパンと、スーパーで買ったプラムと豆乳で晩御飯とする。
ビタミンとタンパク質の補給は大事。



今日歩いたのは20km。食べたうどんは4杯。急遽温泉にも入れた。
完全に観光旅行になっている。
うどんや温泉といった観光要素がメインで、お寺のお参りはサブ。

でも心は穏やかだった。これが涅槃の境地だったりして。

「涅槃とはうどんである」
意:修行はいつしか物見遊山となり、心の平安がおとずれる

そんなメモをして、橋の下を吹き抜ける涼しい風を感じながら眠りに落ちた。

33日目(2)




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