煩悩遍路24日目「旅療法」―菩提の道場―

24日目(1) 

歩き再開初日ということで、のんびりペースで進む。日程にも余裕がある。

生活道路をてくてく進んでいく。
2週間の休養のおかげで、足の痛みは無くなっていた。
靴のサイズが合わなくなっていた件もすっかり元に戻ったようだ。

この辺りは大学や学校が多い。
平日の通学時間と重なっていたこともあって、多くの学生とすれ違った。
特に挨拶はしないけど、なんとなく会釈はしてくれる。それだけで笑顔になった。

道沿いにあった公民館の表にあるベンチで一服していると、
地元のおばちゃんがお接待をしてくれた。
アクエリアスと、公民館の団扇。そしておしゃべり。

暑くなる季節、この団扇にはその後非常に助けられたが、
それだけでなく、再開初日の朝からこうして地元の人とお話ができることがとても幸せに感じた。



まずは52番札所太山寺へ、ポンジュースの大きな看板を横目に歩く。
そして、そのすぐ先に53番円明寺。

お寺では、今回からお参りの際に般若心経を唱えることにした。
これまでは、別に仏教徒としての遍路じゃなくて単に歩きたいだけだったから省いていたのだった。
でも歩いているうちに、様々な縁を感じ、面白い経験をし、
そして毎日お寺に接することから自然と仏教への関心も芽生えてきたりした。

せっかく滅多に出来ないお遍路やってるわけだ。
お経を唱えてみて、もし般若心経がそらんじられるようになったらそれはそれで恰好いいなと。

というわけで、お遍路終盤にしてはぎこちない唱和ではあるが、気分を新たにお参りをする。



お昼時、円明寺近くの小さな食堂に入った。
近所の会社の社員に混じって、日替わり定食500円を注文。

彼らからの視線は感じるけど、おそらくこれもまた、この辺の日常風景。

そしてやはりどうしても思うのは、世間では休みでもなんでもなく、あくまで平日だということ。
僕は会社に行かずお遍路をしているけど、この人達は働いているということ。

でも、それに対して以前ほどは罪悪感みたいなものは感じなくなっていた。
これはこれ、それはそれという気持ちにはなれているのかな。

お店ではおそらくお接待で、食後のコーヒーを頂いた。
ほてった身体にアイスコーヒーがしみる。



ここからは、海沿いに延びる道を北上する。
海の見える道は本当に気持ちいい。笑顔で歩けているのが自分でも分かった。

他の歩き遍路とは全く会わなかったけど、
(そもそもこんな梅雨の時期に歩き遍路はいるのか?)
地元の人とよく喋っていたこともあって、全然退屈はしなかった。



北条港、海の傍に温泉を見つけた。時刻は16時。
今日の野宿場所として目星をつけている道の駅ももうすぐそこなので、ここで温泉に入る。

オーシャンビューの露天風呂。最高。
夕方手前の時間帯の温泉もいいもんだな。

1日の疲れを癒やしてから、近所のスーパーで夕飯を買い、道の駅Fへ。
ちょうど閉館準備をしているところだった。

スタッフの人にテント設営の許可をもらう。
ベンチで夕飯を食べていると、その人から柏餅をお接待してもらった。

子供が福井にいま住んでいるということで、親近感をもっていただいたらしい。
ありがたいなぁ、こうして夕方も話しかけてもらえる。



サンダルで砂浜に行く。海に映る夕日を見れるのはここが最後だろうか。
明日からは、進路は北東になり、そのまま瀬戸内海を左手に、東へ進むことになる。

今日一日を振返ると、やっぱり、旅に出ると気持ちが落ち着くなぁとつくづく思う。
一昨日までの不眠や不安が嘘のようだ。

歩けばいいだけだし、お遍路の恰好をしていると色んな人と喋れる。
歩いた分だけ夜もしっかり眠たくなる。

今日の歩行距離は25km。MAXの日の半分。
だけど、たくさんお喋りできたし、温泉は気持ちよかったし、疲労困憊じゃないし、
最適なペースだと思えた。



明日ものんびり進もう。

24日目(2)


煩悩遍路E日目「3度目のスタート」―菩提の道場―

2回目の区切り遍路を終えて2週間が経った。
まだまだ復職できる状況ではないという判断を医師・会社からともに受け、
休職期間は延長となった。
要するに「焦るな」と。

実は、遍路から日常に帰ると急に調子が悪くなっていた。
当然疲れが出ているというのはあるとは思うけど、
なかなか夜寝つかなかったり、家でゴロゴロしていて気分がふさがったり。

でも、こうしてまた休職期間が延びたことで、お遍路再開の目処がたった。
家で一人過ごしていてもしょうがない、また四国へ行こう、残りを歩ききろうと決心した。



今回の再々スタートにあたって、また装備の見直しをした。

まずはレインウェア。
撥水機能がガタ落ちだったので、最後の望みを託して、洗濯と撥水スプレーとアイロンがけ。
これで撥水が回復するはず…。

続いてテントの下に引くブルーシート。
地面に直にテントを敷くと汚れたり湿ったりするから、一枚テントサイズに切ったブルーシートを敷くと随分違うよと野宿仲間から教えてもらっていたのだ。

ブルーシートを追加する代わりに、テントの外側の部分であるフライシートは持っていかないことにした。季節はもう夏。二重構造だと夜は蒸し暑いだろうという判断。

その他、電池式虫除け、粉末タイプのスポーツドリンク、顔拭きのウェットティッシュなども用意した。

区切り打ちは、こうして毎度装備の見直しができるのはメリットだなと思う。



7月4日(月)、電車とバスを乗り継ぎ、愛媛は松山へと向かう。
前回の遍路最終日に連泊したゲストハウスFに再訪。
女性のスタッフさんが覚えてくれていた。嬉しい。

2周間前くらいに、僕の出発とほぼ入れ違いに入ったという、新しい男性スタッフさんがいた。
僕と同い年。その割に年上の風格がある…と思ったら、
何年もアジア放浪の旅やそこでの暮らしを経験してきたとのこと。
数年前に歩き遍路をして、その時この宿に泊まって、お遍路を止めたという。
オーナーが前に言っていた、この宿の「へんろ殺し」で遍路をやめて、
今度スタッフになる人がいるよ、というのは彼のことだったようだ。

彼はスタッフになってから、知り合いのバーを昼に間借りして、インドカレー屋を始めたとのこと。
なんというか、バイタリティと実現へのスピードが突き抜けててすごい。
でも、すごく自然体な佇まいで、無理しているような感じはなかった。

彼と色々話をしていたが、面白かったのは、
「スタッフ側からするとゲストハウスはガチャポンだ」という話。
たまに超おもしろい人が来て勉強になる…と。
でも、それはその人ならではのことで、そのまま真似するもんでもないよね、とも。
たしかに。

あとは、あれこれ考えるよりも行動したほうが早いしなんとかなる。
或いは考えてなかったことが起きるから、事前に考えて悩む必要が無い。って。

彼が言うと説得力あるんだよなー。
考えるよりもまず行動。



その晩は、僕以外に、会社の営業の出張で松山に来ている女性が泊まっていた。
聞いたところによると、本当は図書館の司書をやりたかったらしいが、色々あって今の仕事をがんばってやっていると。

業績アップすると、いわゆるインセンティブとして、その社員にはグアム旅行が会社からプレゼントされるらしい。
彼女曰く、スカして反発するよりも、会社方針に乗っかって業績アップに向けて頑張ったほうが
旅行もできるし、仕事への気持ちも入るし、トータルで考えると良いことが多いと。

これもまた真だよな。
「転職とか考えないんですか?」というレベルの低い質問をしたのが恥ずかしくなってきた。

結局は気の持ちようということか。



今晩はオーナーさんは登場しなかった。
共同スペースでの歓談はひっそりと幕を閉じ、寝床に入る。

明日から再開するお遍路、残る距離は300kmちょっと。あっという間に終わるかもしれないな。
余計なことは考えず、ゆったり歩こう。

E日目


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